上から目線の言葉
偉い人の書いた本を読むと、ほぼすべての言葉が上から目線で、つまり先生が生徒に、師が弟子に教えるように書かれている。小説ではさまざまな人物が登場し、それぞれの目線での言葉が登場するが、身分の上下、立場の上下、人格の上下、実力の上下が常に言葉のパルスやリズムとなって表現される。
人は二人以上になると同じ場所にいられない。席を別にする。席には序列がつく。序列は知恵の産物でもある。
一人で自分につぶやく言葉であっても意識の底には他人に言い聞かせようとの思いが潜んでいる。誰かに聞いてもらいたいという願望がある。
そのような執着から離れた言葉で表現する文章がかけないものだろうかと思い始めている。それはフィクションの形でないとできないように思える。自分のことを書いたのでは届かない。おぼろげに見えているものに近づいていけるのだろうか。