かなしい、にくい

 かなしい、にくい、など気持ちを表現する単語は独立させたい。たとえば「わたし、かなしい」とか「きみが、にくい」のように。

 かなしい、には、悲しい、哀しい、がよく使われ、文学的表現では、こだわった使われ方をしている。それは、それぞれの漢字に由来やイメージがあるから。

 でも、口から出る「かなしい」が漢字で表記されているわけではなく、聞く人が「悲しい」と聞くか「哀しい」と聴くかは、場のムードや、その人の感受性による。

 肝心なことは漢字でどう書くかではなく、その場の状況や演出したいことを適切に表現しながら「かなしい」を口から出る言葉として書く。そこにある。それができれば読み手がイメージを浮かべる。書き手と読み手に、よい会話ができる。きっと、そうだと思う。